「AWSの資格を取りたいけれど、何から手をつければいいかわからない」――クラウドに初めて触れるエンジニアがまず直面する壁がこれだ。特にオンプレ環境でサーバーの構築や運用をしてきた人ほど、AWSの膨大なサービス一覧を見て途方に暮れることが多い。
AWS認定クラウドプラクティショナー(CLF-C02)は、そんな「クラウド初心者」のために設計された入門資格だ。実務経験がなくても、正しい学習戦略で1か月あれば十分に合格できる。この記事では、試験の基本情報から週単位の具体的な学習計画、オンプレ経験者がハマりやすい落とし穴まで、合格に必要な情報をすべてまとめた。

AWS認定クラウドプラクティショナー(CLF-C02)とは
AWS認定クラウドプラクティショナーは、AWSが提供する認定資格の中で最もエントリーレベルに位置する試験だ。2022年9月にCLF-C01からCLF-C02へ改訂され、出題範囲がよりモダンなAWSサービスを反映した内容に更新されている。
この資格が対象としているのは、AWSクラウドの基本概念、主要サービス、セキュリティ、料金体系を理解しているかどうかだ。ソリューションアーキテクト(SAA-C03)のように設計パターンを問われることはないし、コードを書く問題も出ない。「AWSというプラットフォームの全体像を正しく把握しているか」が問われる試験と考えてほしい。
オンプレの現場でサーバーラックにケーブルを挿してきた経験がある人なら、「物理サーバーでやっていたことがクラウドではどう変わるか」という視点で学ぶと理解が早い。逆に言えば、オンプレ経験がまったくない人でも、AWSの基本概念さえ押さえれば合格は十分に可能だ。
試験の基本情報(受験料・出題範囲・合格ライン)
CLF-C02の試験概要を整理しておく。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験コード | CLF-C02 |
| 試験時間 | 90分 |
| 問題数 | 65問(うち15問は採点対象外のフィールドテスト問題) |
| 出題形式 | 択一選択・複数選択 |
| 合格ライン | 700点 / 1000点満点 |
| 受験料 | 100 USD(2026年4月時点、税別) |
| 受験方法 | テストセンターまたはオンライン監督付き |
| 試験言語 | 日本語を含む複数言語 |
| 有効期限 | 3年間 |
65問中15問は採点されないフィールドテスト問題だが、どの問題が対象外かは受験者には分からない。したがって、すべての問題に真剣に取り組む必要がある。合格ラインの700点はスケーリングスコアなので、単純に70%正解すればいいという話ではないが、目安として50問中35問以上の正答を目指すイメージで勉強するとよい。
受験方法は、ピアソンVUEのテストセンターと自宅でのオンライン受験の2択だ。オンライン受験は手軽だが、Webカメラでの本人確認やデスク周りのチェックがあるため、初めて受けるならテストセンターのほうが集中しやすい。

CLF-C02の4つの出題ドメインと配点比率
CLF-C02の出題範囲は4つのドメインに分かれている。配点比率を見ると、どこに学習の力点を置くべきかが一目で分かる。
| ドメイン | 配点比率 |
|---|---|
| 1. クラウドのコンセプト | 24% |
| 2. セキュリティとコンプライアンス | 30% |
| 3. クラウドテクノロジーとサービス | 34% |
| 4. 請求、料金、サポート | 12% |
配点の約3分の2がドメイン2と3に集中している。ここを落とすと合格は厳しい。一方でドメイン4は12%と軽めだが、ここは覚えるだけで取れる得点源なので捨てるのはもったいない。
1. クラウドのコンセプト(24%)
このドメインでは、AWSクラウドの価値提案と、クラウドへの移行に関する基本概念が問われる。
具体的には以下のようなトピックが含まれる。
・AWSクラウドの6つのメリット: 固定費から変動費への転換、スケールによるコスト削減、キャパシティ推測の不要化、速度と俊敏性の向上、データセンター運用費の削減、グローバル展開の容易さ
・Well-Architectedフレームワーク: 運用上の優秀性、セキュリティ、信頼性、パフォーマンス効率、コスト最適化、持続可能性の6本柱
・クラウド移行戦略: リホスト、リプラットフォーム、リファクタリングなど6つのR
・クラウドエコノミクス: 総所有コスト(TCO)の考え方、固定費と変動費の違い
オンプレ経験者にとって「固定費から変動費への転換」は実感しやすいだろう。自社でサーバーを購入して減価償却するのと、使った分だけ課金されるクラウドの違いは、予算の組み方から変わってくる。
2. セキュリティとコンプライアンス(30%)
配点30%と最も重い分野だ。AWS側と利用者側の責任分界(共有責任モデル)が頻出テーマになる。
・共有責任モデル: AWSが「クラウドのセキュリティ」を担い、利用者が「クラウド内のセキュリティ」を担う
・AWS IAM: ユーザー、グループ、ロール、ポリシーの基本概念と最小権限の原則
・セキュリティサービス: AWS Shield、AWS WAF、Amazon GuardDuty、AWS CloudTrail、Amazon Inspector
・コンプライアンス: AWS Artifactでのコンプライアンスレポート確認、各種認証(SOC、ISO、PCI DSS)
オンプレでファイアウォールのACLを書いていた人なら、セキュリティグループとネットワークACLの違いはすぐに理解できるはずだ。ただし共有責任モデルの「どこまでがAWSの責任で、どこからが自分の責任か」は、オンプレにはない概念なので意識して覚える必要がある。
たとえば、Amazon EC2を使う場合、物理ホストの管理はAWSの責任だが、OS上のパッチ適用やセキュリティグループの設定は利用者の責任だ。一方、AWS Lambdaのようなマネージドサービスでは、OSのパッチ適用もAWS側の責任に含まれる。このサービスごとの責任範囲の違いは、試験でもよく問われるポイントだ。
3. クラウドテクノロジーとサービス(34%)
最大配点のドメインで、AWSの主要サービスの名前と用途を幅広く問われる。深い設計知識は不要だが、「何のためのサービスか」は正確に把握しておく必要がある。
・コンピューティング: Amazon EC2、AWS Lambda、Amazon ECS、AWS Fargate、Amazon Lightsail
・ストレージ: Amazon S3、Amazon EBS、Amazon EFS、AWS Storage Gateway
・データベース: Amazon RDS、Amazon DynamoDB、Amazon Aurora、Amazon Redshift
・ネットワーク: Amazon VPC、Amazon CloudFront、Amazon Route 53、AWS Direct Connect、Elastic Load Balancing
・その他の主要サービス: Amazon SQS、Amazon SNS、AWS CloudFormation、AWS Elastic Beanstalk
オンプレで物理サーバーを触ってきた人にとって、EC2は最もイメージしやすいだろう。「仮想マシンを借りて使う」という概念はVMware環境と変わらない。ただし、クラウドではEC2以外にもLambda(サーバーレス)やECS(コンテナ)など、ワークロードに応じた選択肢がある。試験では「このユースケースにはどのサービスが適切か」という形で問われることが多い。
4. 請求、料金、サポート(12%)
配点は低めだが、暗記で確実に取れる分野なので手を抜かないこと。
・料金モデル: オンデマンド、リザーブド、スポット、Savings Plansの違い
・料金管理ツール: AWS Cost Explorer、AWS Budgets、AWS Pricing Calculator
・サポートプラン: ベーシック、デベロッパー、ビジネス、エンタープライズの4段階
・請求関連: AWS Organizations、一括請求(コンソリデーテッドビリング)
サポートプランの違いは丸暗記が必要だ。特に「ベーシックプランでは何が使えて何が使えないか」「ビジネスプラン以上で使える機能は何か」は頻出する。たとえば、AWS Trusted Advisorの全チェック項目が使えるのはビジネスプラン以上だ。
1か月合格ロードマップ(週単位の学習計画)
平日1〜2時間、休日3〜4時間の学習ペースを想定した4週間の計画を示す。合計約60〜80時間の学習量が目安だ。
第1週: クラウドの全体像を掴む
最初の1週間は、AWSクラウドの基本概念を頭に入れることに集中する。
・Day 1-2: AWSの公式ドキュメント「AWS Cloud Practitioner Essentials」を読む。無料のデジタルトレーニングとして提供されている
・Day 3-4: AWSの主要サービスカテゴリ(コンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワーク)をノートに整理する
・Day 5-7: AWSアカウントを作成し、マネジメントコンソールにログインしてみる。無料利用枠の範囲でEC2インスタンスを1台起動してみると、クラウドの「手触り」が分かる
この段階では細かいサービスの仕様を暗記する必要はない。「AWSにはこういうカテゴリのサービスがあって、こういう思想で設計されている」という全体像を掴むことが目的だ。
オンプレ経験者なら、自社のサーバー構成を思い浮かべながら「これはAWSだとどのサービスに相当するか」と考えると理解が加速する。Webサーバーが動いている物理マシンはEC2、共有ストレージはS3やEFS、バックアップ用のテープはS3 Glacierに対応するイメージだ。
第2週: 主要サービスを手を動かして理解する
2週目は、出題頻度の高いサービスを実際に触りながら学習する。
・Day 8-9: Amazon S3でバケットを作成し、ファイルをアップロード・ダウンロードする。アクセス権限の設定も試す
・Day 10-11: Amazon VPCでサブネットを作成し、セキュリティグループのルールを設定する。オンプレのVLANとの違いを意識する
・Day 12-14: AWS IAMでユーザーとロールを作成し、ポリシーをアタッチする。最小権限の原則を実際に体験する
手を動かす学習では、AWS無料利用枠を活用すればコストはほぼかからない。ただし、必ず学習が終わったらリソースを削除すること。EC2インスタンスを起動したまま放置すると課金が発生する。
# EC2インスタンスの状態を確認するCLIコマンド aws ec2 describe-instances --query "Reservations[*].Instances[*].[InstanceId,State.Name]" --output table # 不要なインスタンスを停止する aws ec2 stop-instances --instance-ids i-xxxxxxxxxxxxxxxxx
AWS CLIの操作は試験には直接出ないが、コンソール画面だけでなくCLIからも触っておくと、サービスの理解が格段に深まる。
第3週: セキュリティと料金体系を固める
3週目は、配点の高いドメイン2(セキュリティ30%)とドメイン4(料金12%)を重点的に学習する。
・Day 15-17: 共有責任モデルを完全に理解する。EC2、S3、Lambda、RDSそれぞれで「どこまでがAWSの責任か」を表にまとめる
・Day 18-19: 料金モデル(オンデマンド、リザーブド、スポット、Savings Plans)の違いを整理する。AWS Pricing Calculatorで実際に見積もりを出してみる
・Day 20-21: サポートプランの違いを暗記する。Trusted Advisorのチェック項目がプランによってどう変わるかもチェック
共有責任モデルは、図に描いて覚えるのが一番効果的だ。「AWSが面倒を見てくれる範囲」と「自分で面倒を見る範囲」の境界線をサービスごとに引けるようにしておくと、試験本番で迷わない。
第4週: 模擬試験と弱点補強
最終週は、模擬試験を繰り返して弱点を潰す。
・Day 22-23: AWS公式の模擬試験(Skill Builderで無料提供)を受ける。正答率と苦手分野を把握する
・Day 24-26: 苦手分野を集中的に復習する。サービス名と用途の対応表を作り、隙間時間に見返す
・Day 27-28: 2回目の模擬試験を受ける。正答率80%以上を目指す
・Day 29-30: 間違えた問題だけを見直す。試験前日は無理をせず、全体のおさらいに留める
模擬試験の正答率が70%を下回るうちは、まだ基礎知識に穴がある。焦って新しい範囲に手を広げるよりも、間違えた問題を徹底的に分析するほうが点数は伸びる。
オンプレ経験者が特にハマるポイント
オンプレ環境で長く仕事をしてきた人が、CLF-C02の学習で陥りやすい罠をまとめる。
・「全部自分で管理する」思考が抜けない: オンプレではハードウェアからOSまで全部自分で管理するのが当たり前だが、クラウドでは「マネージドサービスに任せる」が基本方針だ。試験でも「EC2上に自分でMySQLを入れる」より「Amazon RDSを使う」が正解になるケースが多い
・ネットワーク設計のギャップ: オンプレのVLANとAWSのVPCは似ているようで違う。特にインターネットゲートウェイやNATゲートウェイの概念は、物理ルーターの設定とは発想が異なる
・料金体系への不慣れ: オンプレでは初期投資と保守費用というシンプルな構造だが、AWSではリージョン、インスタンスタイプ、ストレージ種別、データ転送量など複数の軸で料金が決まる。この複雑さに戸惑う人は多い
・「責任共有」の感覚: 自社データセンターでは物理セキュリティから論理セキュリティまで全て自社の責任だが、AWSでは物理層はAWSに任せ、自分はOSより上のレイヤーに集中する。この切り分けは最初は違和感があるが、慣れると非常に合理的だと感じるはずだ
逆に、オンプレ経験が有利に働く場面もある。サーバーのCPU・メモリ・ストレージの概念はそのままEC2のインスタンス選定に活かせるし、バックアップやDR(災害復旧)の基本的な考え方はクラウドでも変わらない。
Linuxサーバーの基礎については、姉妹サイトLinuxMaster.JPで詳しく解説しています。
おすすめ学習リソース
CLF-C02の合格に役立つ学習リソースを厳選して紹介する。
・AWS Skill Builder(無料): AWS公式の学習プラットフォーム。「AWS Cloud Practitioner Essentials」コースが試験範囲を網羅しており、これだけでも合格は可能だ
・AWS公式模擬試験(無料): Skill Builder内で提供されている公式の模擬問題。本番と同じ形式で出題され、解説も付いている
・AWS公式ドキュメント(無料): 各サービスのFAQページは試験対策に直結する。特にEC2、S3、IAM、VPCのFAQは必読
・AWSホワイトペーパー(無料): 「AWS概要」と「料金体系のしくみ」の2つは試験範囲と直結している
・AWSハンズオンチュートリアル(無料): 公式サイトで提供されているステップバイステップの実践ガイド。無料利用枠の範囲で学べる
有料の参考書やオンライン講座も存在するが、CLF-C02は入門レベルの試験なので、上記の無料リソースだけで十分に合格できる。大切なのは、テキストを読むだけでなく実際にAWSコンソールを触ることだ。

本記事のまとめ
AWS認定クラウドプラクティショナー(CLF-C02)は、クラウドの全体像を体系的に学ぶための最良のスタートラインだ。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験レベル | AWS認定の中で最もエントリーレベル |
| 合格ライン | 700点 / 1000点(スケーリングスコア) |
| 学習期間の目安 | 1か月(60〜80時間) |
| 重点学習ドメイン | セキュリティ(30%)とサービス(34%) |
| オンプレ経験者の強み | サーバー・ネットワークの基礎概念がそのまま活きる |
| 最も重要な学習法 | 手を動かしてAWSコンソールを触ること |
1か月という期間は、集中すれば十分な学習時間を確保できる。特にオンプレ経験者は、既存の知識をクラウドの文脈に読み替えるだけで理解が進む部分が多い。まずはAWSアカウントを作成し、第1週の学習から始めてみてほしい。
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