「AWSとAzure、結局どっちを選べばいいんだ?」——クラウド移行を任されたインフラエンジニアが最初にぶつかる壁が、この二大クラウドの選定問題です。
オンプレミス環境でサーバーを管理してきた身からすると、クラウドベンダーのサービスカタログは膨大すぎて、比較する軸すら見えにくいのが正直なところだと思います。名前が違うだけで同じ機能のサービスもあれば、片方にしかない独自サービスもある。料金体系も複雑で、見積もりの段階で心が折れそうになることもあるでしょう。
この記事では、AWSとAzureの主要サービスを機能別に対比しながら、料金体系の違い、選定の判断基準、移行時にありがちなトラブルまで、オンプレ経験者の視点で整理します。2026年3月時点の情報をもとに、現場での意思決定に使える内容にまとめました。

なぜAWS vs Azureが重要なのか(オンプレとの違い・背景)
オンプレミスの世界では、ハードウェアベンダーの選択は「Dell vs HPE vs Lenovo」のような物理サーバーの比較でした。どのベンダーを選んでも、OSの上に載せるミドルウェアやアプリケーションの構成は大きく変わりません。
ところがクラウドでは話が違います。AWSとAzureではマネージドサービスのラインナップ、管理コンソールの操作体系、料金の計算方法、さらにはIAM(権限管理)の設計思想まで異なります。一度どちらかのエコシステムに乗ると、サービス間の連携やCI/CDパイプラインもそのクラウドに最適化されていくため、後から乗り換えるコストは相当に大きくなります。
だからこそ、移行の初期段階で両者の違いを正しく理解し、自社の要件に合ったクラウドを選ぶことが極めて重要です。
シェアの面では、AWSがパブリッククラウド市場で約31%、Azureが約25%を占めています(2025年第4四半期、各社決算報告より)。3位のGoogle Cloudが約11%なので、実質的にはこの2社の二強体制です。
主要サービスの対応表
AWSとAzureの主要サービスを、オンプレでの対応物とあわせて整理します。名前は違っても、役割はほぼ同じサービスが多いことがわかるはずです。
コンピューティング
| 用途 | AWS | Azure | オンプレ相当 |
|---|---|---|---|
| 仮想サーバー | Amazon EC2 | Azure Virtual Machines | VMware / KVM |
| コンテナ(マネージド) | Amazon ECS / EKS | Azure Kubernetes Service(AKS) | Docker / Kubernetes自前構築 |
| サーバーレス | AWS Lambda | Azure Functions | 該当なし |
| PaaS(Webアプリ) | AWS Elastic Beanstalk | Azure App Service | Tomcat / IISを自前構築 |
オンプレ時代にVMwareで仮想化していた方は、Amazon EC2やAzure Virtual Machinesへのリフト&シフトが最も馴染みやすいでしょう。機能面では大差なく、選定は後述する料金やエコシステムの違いで判断する場面が多いです。
ストレージ
| 用途 | AWS | Azure | オンプレ相当 |
|---|---|---|---|
| オブジェクトストレージ | Amazon S3 | Azure Blob Storage | NAS / ファイルサーバー |
| ブロックストレージ | Amazon EBS | Azure Managed Disks | SAN / ローカルディスク |
| ファイル共有 | Amazon EFS | Azure Files | NFS / SMB共有 |
| アーカイブ | Amazon S3 Glacier | Azure Archive Storage | テープバックアップ |
ストレージは料金差が出やすい領域です。特にオブジェクトストレージは、保存だけでなくデータ転送(特にアウトバウンド)でも課金されるため、オンプレの「ディスクを買えば使い放題」という感覚とは根本的に異なります。
データベース
| 用途 | AWS | Azure | オンプレ相当 |
|---|---|---|---|
| RDB(マネージド) | Amazon RDS | Azure SQL Database | MySQL / PostgreSQL自前運用 |
| NoSQL | Amazon DynamoDB | Azure Cosmos DB | MongoDB自前構築 |
| インメモリキャッシュ | Amazon ElastiCache | Azure Cache for Redis | Redis / Memcached自前構築 |
データベース領域で特筆すべきは、AzureがSQL Serverとの親和性で大きく有利な点です。オンプレでSQL Serverを使っている環境なら、Azure SQL Databaseへの移行はライセンスの持ち込み(Azure Hybrid Benefit)も含めて非常にスムーズです。一方、OSSデータベース(MySQL、PostgreSQL)中心であればAWSのRDSも十分な選択肢になります。
ネットワーク
| 用途 | AWS | Azure | オンプレ相当 |
|---|---|---|---|
| 仮想ネットワーク | Amazon VPC | Azure Virtual Network(VNet) | VLAN / L3スイッチ |
| ロードバランサー | Elastic Load Balancing(ALB/NLB) | Azure Load Balancer / Application Gateway | F5 / HAProxy |
| DNS | Amazon Route 53 | Azure DNS | BIND / Windows DNS |
| 専用線接続 | AWS Direct Connect | Azure ExpressRoute | 専用線(キャリア回線) |
ネットワーク設計の考え方は、AWSもAzureもオンプレのL2/L3設計に近い概念を持っています。ただしAWSのVPCは「サブネット=AZ(アベイラビリティーゾーン)単位」であるのに対し、AzureのVNetは「サブネットがAZをまたぐ」という違いがあります。オンプレのネットワーク設計経験がある方は、この差をまず押さえておくと設計がスムーズです。

料金体系の違い
両者とも従量課金が基本ですが、割引の仕組みに差があります。
AWSの割引体系:
・リザーブドインスタンス(RI): 1年または3年の利用をコミットすると最大72%割引(2026年3月時点)
・Savings Plans: コンピューティング使用量を金額ベースでコミットする柔軟な割引プラン
・スポットインスタンス: 余剰キャパシティを最大90%割引で利用。ただし中断リスクあり
Azureの割引体系:
・Reserved VM Instances: AWSのRIと同様、1年/3年コミットで最大72%割引(2026年3月時点)
・Azure Savings Plan for Compute: AWSのSavings Plansと類似の金額コミット型割引
・Azure Hybrid Benefit: 既存のWindows ServerやSQL Serverライセンスをクラウドに持ち込める。これはAzure独自の強み
・Azure Spot Virtual Machines: AWSスポットと同様の余剰キャパシティ割引
オンプレからの移行で見落としがちなのが、データ転送料金です。AWSもAzureも、クラウドから外部へのアウトバウンドトラフィックに課金されます。オンプレ間の通信では意識しなかったコストが発生するため、特にリージョン間通信やCDN配信が多い構成では事前の見積もりが必須です。
料金の比較には、AWSなら「AWS Pricing Calculator」、Azureなら「Azure料金計算ツール」を使うのが確実です。同じスペックでも、リージョン(東京リージョン: AWSはap-northeast-1、Azureはjapaneast)によって単価が異なるため、必ず利用予定のリージョンで見積もってください。
選定基準: どちらを選ぶべきか
万能な正解はありません。自社の状況に合わせて判断軸を整理するのが最も現実的です。
AWSが向いているケース:
・Linux中心のインフラ構成で、OSSのエコシステムを活用したい
・マネージドサービスの選択肢の多さを重視する(AWSは200以上のサービスを提供)
・スタートアップやWebサービス企業で、スピード重視の開発をしたい
・クラウドネイティブな設計を最初から志向している
Azureが向いているケース:
・Windows Server、Active Directory、SQL Serverなどマイクロソフト製品が社内の主力
・Microsoft 365(旧Office 365)との統合が重要な要件
・Azure Hybrid Benefitでライセンスコストを削減したい
・エンタープライズ契約(EA)でマイクロソフトと既に取引がある
どちらでもよいケース:
・コンテナやKubernetesベースのアーキテクチャなら、EKSもAKSも成熟している
・マルチクラウド前提の設計なら、Terraformなどの抽象化レイヤーで差を吸収できる
Linuxサーバーの基礎については、姉妹サイトLinuxMaster.JPで詳しく解説しています。
実務上のアドバイスとしては、「社内にどちらの知見を持つ人材が多いか」も無視できない選定基準です。優れたアーキテクチャも、運用できる人がいなければ意味がありません。
よくあるトラブルと対処法
オンプレからクラウドに移行した際に、AWSでもAzureでも共通して発生しやすいトラブルを挙げます。
1. 想定外のコスト増
原因の多くは、データ転送料金の見落としと、検証用に立てたリソースの消し忘れです。対策として、AWSならAWS Cost Explorer、AzureならAzure Cost Managementで日次のコスト監視と予算アラートを必ず設定してください。
2. 権限設定の事故
AWSのIAMポリシーとAzureのRBAC(ロールベースアクセス制御)は設計思想が異なります。AWSは「デフォルト拒否・明示許可」、AzureはActive Directoryベースの階層構造です。オンプレの「rootで全部やる」習慣を持ち込むと、過剰な権限を付与してしまいがちです。最小権限の原則を徹底しましょう。
# AWS: 現在のIAMユーザーの権限を確認 aws iam list-attached-user-policies --user-name your-username # Azure: 現在のロール割り当てを確認 az role assignment list --assignee your-email@example.com --output table
3. リージョン選択のミス
東京リージョン(AWSはap-northeast-1、Azureはjapaneast)を使うつもりが、デフォルトのバージニア北部(us-east-1)やEast US(eastus)でリソースを作成してしまうケースがあります。CLIのデフォルトリージョン設定を最初に済ませておくのが鉄則です。
# AWS CLI: デフォルトリージョンを東京に設定 aws configure set default.region ap-northeast-1 # Azure CLI: デフォルトリージョンを東京に設定 az configure --defaults location=japaneast
4. ネットワーク設計の不整合
オンプレのフラットなネットワーク構成をそのまま持ち込むと、セキュリティグループ(AWS)やNSG(Azure)の設定が甘くなりがちです。クラウドではサブネット分割とアクセス制御をセットで設計するのが基本です。

本記事のまとめ
AWSとAzureの主要な違いを振り返ります。
| 比較軸 | AWS | Azure |
|---|---|---|
| 市場シェア | 約31%(1位) | 約25%(2位) |
| サービス数 | 200以上 | 200以上 |
| 強み | 先行者優位、OSSとの親和性 | MS製品との統合、Hybrid Benefit |
| 割引の特徴 | RI、Savings Plans、スポット | Reserved、Savings Plan、Hybrid Benefit |
| 向いている環境 | Linux中心、クラウドネイティブ | Windows/AD中心、エンタープライズ |
| 入門資格 | AWS SAA-C03 | Azure AZ-900 |
最終的な選定は、「自社の既存資産(ライセンス・人材・ナレッジ)」と「今後のアーキテクチャ方針」の2軸で判断するのが最も実践的です。どちらも成熟したプラットフォームなので、「選んだほうを深く使いこなす」方向に注力するのが、結果としてコスト効率も運用品質も高くなります。
まずは片方の無料枠で手を動かしてみることをおすすめします。AWSには12か月の無料利用枠、AzureにもAzure無料アカウント(12か月の無料サービス+$200クレジット)があります。実際にコンソールを触ってみると、ドキュメントだけでは見えない操作感の違いが体感できるはずです。
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