データエンジニアリングのスキルを証明したいのに、どの資格を取ればいいか迷っている――そんなエンジニアが増えている。AWS SAA(ソリューションアーキテクト)は持っているけれど、「データ基盤を設計・運用できる」ことを対外的に示す資格がなかった。その空白を埋めるために2024年4月にリリースされたのが、AWS Certified Data Engineer Associate(DEA-C01)だ。
この記事では、DEA-C01の試験概要から出題ドメイン別の傾向、3か月学習ロードマップ、試験本番の注意点まで、オンプレ経験のあるインフラエンジニアにもわかりやすく解説する。SAAを持っていてデータ領域に踏み込みたいエンジニア、データパイプライン設計の実務経験をすでに持つエンジニア、どちらにもそのまま使えるガイドだ。

なぜ今、DEA-C01を取るべきか
データエンジニアリングへの需要は急増している一方、「AWS上でデータパイプラインを設計・運用できる」ことを証明する資格がなかった。これまでAWS認定では、ビッグデータ絡みの問題がSAAやMLスペシャリティに分散していたが、DEA-C01はデータの取り込み・変換・保管・ガバナンスに特化した、初のデータエンジニア向け認定だ。
取得する意義を3点に絞ると次のとおりだ。
・競合が少ない段階での先行者優位: リリースから日が浅く、日本語の合格体験記や学習教材が他の資格と比べてまだ少ない。今取ることで差別化になる
・SAAからの自然なステップアップ: SAAで学んだVPC・IAM・S3の知識を土台にしながら、Glue・Kinesis・Lake FormationといったデータサービスをAWS固有の文脈で習得できる
・実務直結の学習内容: ETL設計、データレイク構成、ストリーミング vs バッチの判断基準など、日常的に必要な判断力を体系的に整理できる
DEA-C01 試験の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験コード | DEA-C01 |
| レベル | アソシエイト |
| 問題数 | 65問(採点対象50問+未採点15問) |
| 試験時間 | 130分 |
| 合格スコア | 720/1000 |
| 受験料 | $150 USD(2026年執筆時点) |
| 形式 | 多肢選択・複数選択・並べ替え・マッチング・ケーススタディ |
| 推奨経験 | データエンジニアリング実務2年以上、AWS使用経験1年以上 |
問題形式に「並べ替え」と「マッチング」が含まれる点がSAAとの大きな違いだ。ETLパイプラインの処理順序を問う並べ替え問題や、AWSサービスとユースケースのマッチング問題が出る。時間は130分と余裕があるが、ケーススタディ問題は読み込みに時間がかかるため、見直し時間を含めて1問あたり2分以内を目安にペースを作ること。
出題ドメイン別 傾向と対策
試験は4つのドメインに分かれており、配点比率が異なる。それぞれの核心を押さえておく。
ドメイン1: データの取り込みと変換(34%)
配点が最も高いドメインで、ここが合否を左右する。問われるのは「どのサービスでどの形式のデータをどう取り込むか」という設計判断だ。
AWS Glueが中心サービスだ。Glueクローラー・Data Catalog・ETLジョブの役割を明確に区別できるようにしておく。特に「Glue Studio vs Glue DataBrew」の使い分けは頻出で、DataBrewは「コードを書かずにビジュアルでデータ前処理」、Glue Studioは「Sparkベースのスクリプト実行」という棲み分けを押さえる。
ETLとELTの設計判断の違いも問われる。RedshiftやSnowflakeへロードしてからTransformするELTパターンが増えており、どちらが適切かを判断する問題が出る。
ストリーミングデータ処理ではKinesis Data Streamsとマネージド型のAmazon MSK(Kafka)の使い分けが重要だ。KDS・KFF・KDAの違いを整理しておくこと。
ドメイン2: データストア管理(26%)
データの種類(構造化・半構造化・非構造化)に対して、どのAWSストレージ・DBサービスを選ぶかという判断力が試される。
データレイク・データウェアハウス・データマートの概念と対応サービスは必須の基礎知識だ。S3をデータレイクとして使う場合のバケット設計(プレフィックス設計、パーティション戦略)も問われる。
Amazon Redshiftでは、DistKeyとSortKeyの選択基準、Redshift Serverlessとプロビジョニング型の使い分け、Spectrumを使った外部テーブル参照がよく出る。Redshiftのコスト最適化で扱うノードタイプ選択の知識も試験に直結する。
AWS Lake Formationはこのドメインの核心だ。Column-levelセキュリティ、Row-level filtering、データカタログとGlueの関係性を理解しておく必要がある。Lake FormationのPermissionsとIAMポリシーの二重管理が実務でも混乱しやすいポイントであり、試験でも繰り返し問われる。
ドメイン3: データ運用とサポート(22%)
パイプラインのオーケストレーション、監視、トラブルシューティングが中心だ。
AWS Step Functionsによるジョブ依存関係の管理、Amazon EventBridgeによるスケジュールとイベント駆動の組み合わせは頻出だ。Step Functionsのステートマシン設計を理解していると有利だ。
Amazon Athenaのパーティションプルーニングと圧縮形式(Parquet・ORC)の選択、クエリのコスト効率化も問われる。Athenaのコスト最適化手法はそのまま試験対策になる。
Amazon EMR(Spark/Hive)についても、EC2クラスター vs サーバーレス(EMR Serverless)の使い分け、スポットインスタンスとの組み合わせが問われる。EMRはアソシエイト級としては難易度が高いが、基本的なユースケース(大規模バッチ変換)は押さえておく。
ドメイン4: データのセキュリティとガバナンス(18%)
配点は低いが、実務経験がないエンジニアが落としやすいドメインだ。
暗号化: S3のSSE-S3・SSE-KMS・SSE-C・CSEの違い、Redshiftの保管データ暗号化とKMSキーローテーションを理解する。AWS MacieでのPII検出と、Lake Formationのファイングレインドアクセス制御を組み合わせる設計が問われる。
データカタログのアクセス制御: Glue Data CatalogへのIAMポリシーと、Lake Formationのグラントベースの許可モデルを区別できるようにすること。「誰がどのテーブルのどのカラムを参照できるか」をLake Formationで管理する設計は出題頻度が高い。
3か月学習スケジュール
前提: AWS SAA-C03取得済み、AWSコンソール操作に慣れていること。未経験の場合はSAA習得後に本ガイドを使うことを勧める。
1か月目: データサービスの全体像を掴む
・Week 1~2: AWSの公式試験ガイド(Exam Guide)を熟読し、4ドメインの範囲を把握する。AWS Skill BuilderのDEA-C01公式学習コース(無料)を通しで受講する
・Week 3: Glue、Kinesis、S3、Redshiftを実際にAWSコンソールで触る。ハンズオンは理解の定着に効果的だ
・Week 4: データレイク・データウェアハウスの概念と、AWSサービスの対応関係を整理する。OLTPとOLAPの違いを自分の言葉で説明できるレベルにする
2か月目: ドメイン別深掘りと主要サービスの習熟
・Week 5~6: ドメイン1(データ取り込みと変換)を集中攻略。Glue ETLジョブのサンプルコードをCloud9またはローカルで動かし、クローラーがどうスキーマを推測するかを体験する
・Week 7: ドメイン2(データストア管理)。Lake Formationの権限設定を実際のアカウントで試す。Column-levelアクセスコントロールはドキュメントを読むだけでなく設定を一度やってみることで理解が深まる
・Week 8: ドメイン3・4を一通り学習し、AWS DMSによるデータ移行フローも確認する
3か月目: 模試と弱点補強
・Week 9~10: Udemy等の模擬試験(WhizLabsまたはTutorialsDojo)を本番同様の環境で3回受ける。65問×130分を守ること
・Week 11: 正答率が60%以下だったドメインを重点的に復習。Lake FormationとKinesis絡みの問題は解説をじっくり読む
・Week 12: 模試で80%以上を安定して取れたら予約。最終週はAWS公式のサンプル問題(Exam Readiness)で本番の問題感覚を確認する
合格に必須の重要サービス早見表
| サービス | 役割 | 試験での頻出ポイント |
|---|---|---|
| AWS Glue | マネージドETL・データカタログ | クローラーとETLジョブの動作、DataBrewとの使い分け |
| Amazon Kinesis | リアルタイムストリーミング | KDS・KFF・KDAの違い、シャード数の計算 |
| Amazon Redshift | クラウドDWH | DistKey/SortKey選択、Spectrum、Serverlessとの比較 |
| Amazon Athena | S3上のサーバーレスクエリ | パーティション・圧縮形式・クエリコスト最適化 |
| AWS Lake Formation | データレイクのアクセス制御 | Column/Row-levelセキュリティ、IAMとの併用 |
| Amazon EMR | 大規模分散処理(Spark/Hive) | EC2クラスター vs EMR Serverless、スポット活用 |
| AWS DMS | データベース移行・レプリケーション | 同種/異種移行の違い、SCTとの組み合わせ |
| AWS Step Functions | ジョブオーケストレーション | 標準 vs エクスプレスワークフローの選択 |
| Amazon MSK | マネージドKafka | Kinesisとの使い分け(既存Kafkaの移行ならMSK) |
| Amazon QuickSight | BIダッシュボード | SPICEとダイレクトクエリの違い、行レベルセキュリティ |
試験本番の注意点・よくある引っかかりポイント
実際に試験を受けたエンジニアから聞いた「ここで迷った」ポイントを整理する。
・Glue vs DMS の使い分け混乱: 「オンプレRDS→Amazon Redshiftへ移行」ならDMS+SCTが定石だが、「S3上のJSON→Parquet変換」はGlue ETLの仕事だ。データの変換用途かマイグレーション用途かで判断する
・Lake Formation vs S3バケットポリシーの優先関係: Lake Formationが有効化されたアカウントでは、Lake Formationの許可設定が実質的に主役になる。「S3バケットポリシーだけで制御できる」は誤りになる問題が出る
・Kinesis Data Streamsのシャード計算: 「1シャードあたり書き込み1MB/秒・1000レコード/秒、読み取り2MB/秒」という数字を丸暗記するのではなく、スループット要件からシャード数を逆算できるようにする
・ETL vs ELTの選択: Redshiftを使う場合はELT(S3にロードしてからRedshift Spectrum or COPY)のほうが効率的なケースが多い。Glue ETLを使うのはターゲットがRedshift以外の場合や変換ロジックが複雑な場合という判断軸を覚える
・並べ替え問題での時間ロス: 処理ステップの順序を問う問題は選択肢が4~6ステップあり、見た目より時間がかかる。確信がない場合は「フラグを立てて後回し」の選択も有効だ
他のAWS資格との学習範囲の重なり
DEA-C01はSAA・SOA・SCSなど他の資格と学習範囲が重なる部分がある。既取得資格との関係を把握しておくと効率よく学習できる。
| 既取得資格 | DEA-C01との共通範囲 | 新たに必要な知識 |
|---|---|---|
| SAA-C03 | IAM、S3設計、VPC、Kinesis基礎 | Glue深掘り、Lake Formation、Redshift詳細、EMR |
| SOA-C02 | CloudWatch監視、Step Functions、EventBridge | データ特化サービス全般、QuickSight |
| DOP-C02 | CI/CDパイプライン、IaC、Step Functions | データストア設計、Lake Formation、ETL変換 |
SAAを持っているエンジニアなら、追加の学習時間は60~80時間(2~3か月)が現実的な目安だ。データ基盤の実務経験があれば50時間前後に短縮できる。

本記事のまとめ
DEA-C01はAWS認定の中でも「データエンジニアリング」に特化した数少ない資格で、SAAの次の一手として非常に有効だ。ポイントをまとめる。
・4ドメインのうちドメイン1(データ取り込みと変換)が34%と最重要——Glue・Kinesis・ETL設計を最優先で学ぶ
・Lake Formationのアクセス制御はオンプレ経験者にとって最も馴染みのない概念——実際にコンソールで設定してみること
・並べ替え・マッチング問題に慣れるため、模試は必ずTutorialsDojosやWhizLabsの実践形式で行う
・SAA取得済みなら2~3か月、1日1~2時間の学習で合格圏内に入れる
・試験範囲のサービスの大半(Athena・Redshift・Kinesis・DMS・Step Functions)は実務でも頻繁に使う——資格対策と実務スキル向上を同時に行える資格だ
データパイプラインの設計・運用スキルを資格という形で証明したいエンジニアに、DEA-C01は今もっとも取得コスパの高い選択肢の一つだと言える。
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AWS上での設計原則・サービス選択・セキュリティ・コスト最適化を網羅したガイドブック。DEA-C01の基盤となるAWS全体アーキテクチャの理解を固めるのに最適で、試験対策と実務の両面で参照できる一冊。
