「AWSもAzureも触ってきたが、GCPだけ手が出ていない。でも、マルチクラウド案件が増えてきて、GCPを知らないと話にならない場面が増えてきた」——そんな悩みを持つインフラエンジニアが増えている。
Google Cloud の Associate Cloud Engineer(以下ACE)は、GCPを実務レベルで扱う力を証明するための基盤資格だ。AWSやAzureの知識があれば概念が転用しやすく、正しい順序で学べば2か月以内での合格は十分に現実的だ。
この記事では、試験の概要・GCPコアサービスのAWS/Azure対応表・2か月で合格するための学習ロードマップ・おすすめ教材・よくある落とし穴まで、現場目線で一通り整理する。
AWSとAzure経験者がいまACEを目指すべき理由
ここ数年、案件の文脈で「GCPも見れますか?」と聞かれる機会が明確に増えた。背景には2つの流れがある。
ひとつはAIワークロードとの親和性だ。BigQueryやVertex AIはデータエンジニアリングとMLの両方でデファクトに近い位置まで来ており、生成AIを活用するシステムでGCPが採用されるケースが増えている。もうひとつはマルチクラウド化だ。オンプレからクラウドへの移行が一巡したあと、「特定クラウドへのロックインを避けたい」という需要が高まり、AWS+GCP、Azure+GCPといった構成が現場に増えている。
ACEは基盤資格とはいえ出題範囲が広く、コンピュート・ストレージ・ネットワーク・IAM・監視・コンテナまで一通りカバーする。GCPに入門するための体系的な地図として機能する資格だ。
ACE試験の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験時間 | 2時間 |
| 問題数 | 約50問(多肢選択・複数選択) |
| 受験料 | 200 USD(2026年6月時点) |
| 認定有効期限 | 2年間 |
| 試験言語 | 日本語対応あり(英語との切り替え可) |
| 受験形式 | Kryterion Webassessor(テストセンター or 自宅受験) |
合格ラインはGoogleが非公表だが、実受験者の情報を総合すると概ね70%前後とされている。試験問題は日本語訳の精度が高く、英語に自信がない場合でも問題なく読み解ける。
出題ドメインの構成比
Googleが公開している試験ガイドによると、出題はおおむね5つのドメインに分かれる。
・クラウドソリューション環境のセットアップ(約20%): プロジェクト作成・課金アカウント設定・IAM初期設定
・クラウドソリューションの計画・構成(約25%): リソースの見積もり・ネットワーク設計・データストレージ選定
・クラウドソリューションのデプロイ・実装(約25%): Compute Engine・GKE・Cloud Run・Cloud Storageの操作
・クラウドソリューションの正常動作の確認(約20%): Cloud Monitoring・Cloud Logging・Cloud Traceによる監視
・アクセスとセキュリティの構成(約10%): IAMロール・サービスアカウント・VPC Service Controls
「計画・デプロイ」が試験の核心で、合計50%を占める。コンソール操作と gcloud コマンドを実際に使えるレベルまで引き上げることが得点の近道だ。
まず押さえるべきGCPコアサービス一覧
AWS/Azure経験者にとってGCPの最大の壁は「名前が違うだけで同じようなサービスが多い」点だ。最初に対応表を頭に入れておくと、学習速度が大きく変わる。
| やりたいこと | AWS | Azure | GCP |
|---|---|---|---|
| 仮想サーバー | Amazon EC2 | Azure VM | Compute Engine |
| オブジェクトストレージ | Amazon S3 | Azure Blob Storage | Cloud Storage |
| マネージドKubernetes | Amazon EKS | Azure AKS | Google Kubernetes Engine(GKE) |
| サーバーレス(FaaS) | AWS Lambda | Azure Functions | Cloud Functions / Cloud Run |
| マネージドRDB | Amazon RDS | Azure SQL Database | Cloud SQL |
| NoSQL(ドキュメント型) | Amazon DynamoDB | Azure Cosmos DB | Cloud Firestore |
| NoSQL(ワイドカラム型) | Amazon DynamoDB | Azure Cosmos DB(Cassandra API) | Cloud Bigtable |
| メッセージキュー | Amazon SQS / SNS | Azure Service Bus | Cloud Pub/Sub |
| 監視・アラート | Amazon CloudWatch | Azure Monitor | Cloud Monitoring |
| ログ管理 | CloudWatch Logs | Azure Log Analytics | Cloud Logging |
| CDN | Amazon CloudFront | Azure CDN | Cloud CDN |
| DNS | Amazon Route 53 | Azure DNS | Cloud DNS |
| ロードバランサー | AWS ALB / NLB | Azure Load Balancer / Application Gateway | Cloud Load Balancing |
| データウェアハウス | Amazon Redshift | Azure Synapse Analytics | BigQuery |
| CI/CD | AWS CodePipeline | Azure DevOps | Cloud Build / Cloud Deploy |
| シークレット管理 | AWS Secrets Manager | Azure Key Vault | Secret Manager |
特に頻出なのは Compute Engine・Cloud Storage・GKE・Cloud SQL・Cloud Pub/Sub・BigQuery の6サービスだ。これらの使い方と料金体系を優先的に理解しておくと、試験のスコアが安定しやすい。
GCPならではの概念:オンプレ・AWSとここが違う
AWS/AzureからGCPに入ると、「GCP流」の概念でつまずく場面がある。代表的なものを先に整理しておく。
1. プロジェクト単位のリソース管理
AWSでは「アカウント>リージョン>VPC」という階層でリソースを管理する。GCPは「組織(Organization)>フォルダ>プロジェクト」という階層で、リソースはすべてプロジェクトに紐付く。コスト管理・IAM・APIの有効化もプロジェクト単位だ。「アカウント」の感覚でプロジェクトを使うと理解しやすい。
2. サービスアカウントとIAMロールの関係
GCPのIAMはシンプルな設計で、プリンシパル(誰が)・ロール(何ができるか)・リソース(どこに対して)の3要素で構成される。AWSのIAMポリシーと比べると、ロールの種類(基本ロール・事前定義ロール・カスタムロール)の棲み分けを覚えておくことが重要だ。VMやアプリケーションに権限を与える「サービスアカウント」はAWSのIAMロール(EC2インスタンスロール)に相当する。
3. グローバルVPCの設計思想
AWSのVPCは「1リージョンに1VPC」が基本だ。GCPのVPCはデフォルトでグローバル設計になっており、単一のVPCで複数リージョンのサブネットを束ねられる。「東京リージョン(asia-northeast1)」と「米国中部(us-central1)」を1つのVPCにまとめることが自然にできる。この概念がわかると、ネットワーク設計問題で迷いにくくなる。
2か月合格ロードマップ
AWSまたはAzureの実務経験がある前提で、週単位の学習目標を組んだ。1日1.5時間程度のペースを想定している。
1週目~2週目: GCP基礎とコアインフラ
まず「GCPの世界観」を頭に入れる。以下の順序で学ぶと効率がよい。
・Google Cloud Skills Boost の「Google Cloud Fundamentals: Core Infrastructure」を完走する
・プロジェクト作成・課金アカウント紐付け・APIの有効化を実際に手を動かして試してみる
・Compute Engine でVMを起動し、gcloud コマンドでSSH接続するまでを体験する
・Cloud Storage のバケット作成・オブジェクトのアップロード・アクセス制御(IAM vs レガシーACL)を確認する
・VPCのサブネット設計・ファイアウォールルール・Cloud NATの概念を整理する
この段階での目標は「コンソールを見て迷わない」レベルだ。完璧な理解よりも全体像の把握を優先する。
3週目~4週目: コンテナとサーバーレス
ACEの試験ではGKEとCloud Runの出題比率が高い。AWSのEKS・ECS・Fargateと対比しながら学ぶと理解が速い。
・GKEクラスタ(Autopilot vs Standard)の違いと使い分けを理解する
・kubectl コマンドで Pod・Deployment・Service を作成・管理する基本操作を体験する
・Cloud Run でコンテナをデプロイし、Cloud Build からCI/CDパイプラインを組む流れを確認する
・Cloud Functions のHTTPトリガー・Pub/Subトリガーの使い分けを整理する
5週目~6週目: IAM・セキュリティ・データサービス・運用監視
この期間が試験の核心となる範囲だ。特にIAMとCloud Monitoringは出題頻度が高い。
・IAMロールの3種類(基本・事前定義・カスタム)と最小権限原則を理解する
・サービスアカウントの作成・バインディング・キー管理の注意点を把握する
・Cloud SQL(MySQL/PostgreSQL/SQL Server)の構成と高可用性設定を確認する
・BigQueryのデータセット・テーブル・クエリの基本操作を体験する
・Cloud Monitoring でダッシュボードとアラートポリシーを設定する手順を整理する
・Cloud Logging でログベースの指標(Log-based metrics)を作成する方法を確認する
7週目: 模擬試験で弱点を洗い出す
Google Cloud 公式の模擬試験(無料公開)を最初に受けてスコアと苦手分野を把握する。その後、Udemyなどの問題集で周回練習する。
・正解率が低い分野のドキュメントを読み直す(Google Cloud ドキュメントは日本語訳の精度が高い)
・「なぜこのサービスを選ぶのか」を選択肢パターンの暗記ではなく、設計の理由から理解し直す
・gcloud コマンドの構文(gcloud compute instances create、gcloud container clusters create など)をまとめて整理する
8週目: 直前対策と本番準備
・模擬試験で安定して75%以上取れるようになったら受験申し込みをする
・試験当日は「英語も確認できる」設定で受験すると、日本語訳が曖昧な問題にも対処できる
・試験は2時間・約50問で時間的な余裕があるため、わからない問題は後回しにして最後に戻る
おすすめ学習教材
学習の軸となる教材を3つに絞って紹介する。フェーズに合わせて使い分けるのが効果的だ。
【公式】Google Cloud Skills Boost
Google Cloud の公式学習プラットフォーム。ハンズオンラボが充実しており、無料クレジットで実際のGCP環境を使いながら学べる。「Associate Cloud Engineer Learning Path」を軸に据えると試験範囲を体系的にカバーできる。学習クレジットの購入が必要な場合もあるが、初回は無料ラボが多数用意されている。
【書籍】Official Google Cloud Certified Associate Cloud Engineer Study Guide
Dan Sullivan 著の公認テキスト(英語)。試験ドメインに沿った構成で、章末の練習問題が本番に近い難易度だ。英語に自信がない場合でも補助教材として活用する価値がある。
【模擬試験】Udemyの模擬試験問題集
「Google Cloud Associate Cloud Engineer Practice Tests」として複数の問題集が販売されており、セール時に1,500円前後で入手できる。本番に近い形式の問題が200問以上収録されているものを選ぶとよい。模擬試験は繰り返し解いて解説を読み込むことが重要で、1周するだけでは身につかない。
よくある落とし穴と対処法
【落とし穴1】「AWSと同じだろう」で深堀りをやめてしまう
対応表を頭に入れることは重要だが、「Compute EngineはEC2と同じだから大丈夫」と飛ばすのは危険だ。GKEのAutopilotとStandardの違い、Cloud StorageのIAMポリシーとレガシーACLの使い分けなど、GCP独自の選択肢が試験頻出になっている。「名前が似ているだけで挙動が違う部分」を意識的に調べる習慣が合否を分ける。
【落とし穴2】gcloudコマンドを見たことはあるが打ったことがない
試験ではCLI操作の問題が出る。Compute Engine のVMを起動するコマンド、GKEクラスタの認証情報を取得するコマンドなど、基本的な gcloud コマンドの構文は手を動かして覚えないと定着しない。Google Cloud Skills Boost のハンズオンラボで実際に操作する機会を作ることが重要だ。
【落とし穴3】IAMロールの種類を丸暗記しようとする
基本ロール(Owner・Editor・Viewer)と事前定義ロール(例: roles/compute.instanceAdmin)の使い分けは「最小権限の観点でどちらが適切か」という設計の文脈で理解するのが正攻法だ。丸暗記では選択肢のひっかけに対応できない。
【落とし穴4】BigQueryとCloud SQLを混同する
どちらもデータベースサービスだが、用途がまったく違う。Cloud SQLは「トランザクション処理(OLTP)のためのマネージドRDB」、BigQueryは「分析クエリ(OLAP)のためのサーバーレスDWH」だ。問題文に「大量のデータを分析したい」とあればBigQuery、「アプリケーションのDBバックエンドが必要」とあればCloud SQLが選択の軸になる。
本記事のまとめ
| テーマ | ポイント |
|---|---|
| ACEの位置付け | GCPの実務力を証明する基盤資格。AWS/Azure知識が転用できる |
| 試験概要 | 2時間・約50問・受験料200 USD・認定2年間・日本語対応 |
| 頻出サービス | Compute Engine・Cloud Storage・GKE・Cloud SQL・BigQuery・IAM |
| 学習期間 | AWS/Azure経験者なら2か月(週10時間程度)が目安 |
| 教材の軸 | Google Cloud Skills Boost(ハンズオン)+Udemy模擬試験 |
| 注意点 | GCP固有の設計思想(プロジェクト・グローバルVPC・サービスアカウント)は手を動かして理解する |
GCPは「クラウドをある程度知っているエンジニアが次のステップに進む」選択肢として、着実に存在感を増している。AWSとAzureをベースに持つエンジニアが最短でキャリアに幅を持たせるなら、ACEを目標に学習を体系化するのが最も効率的なルートだ。
GCPのVMやコンテナ上でLinuxを動かす際に必要なコマンド操作・ファイルパーミッション・プロセス管理の基礎は、姉妹サイトLinuxMaster.JPで詳しく解説しています。
GCPのACEを目指してGCP全体を体系的に学びたいですか?
クラウド実務に役立つ「Cloud Certification」カテゴリの記事を他にもまとめています。あわせて読みたい関連記事はこちらからどうぞ。
