SAA-C03を取得してしばらく経つけど、次は何を目指せばいい?SAPって難しいって聞くけど、インフラエンジニアの自分には向いているのかな——そんなことを考えているエンジニアは多いと思います。
実際、AWS認定資格の中でSolutions Architect Professional(SAP-C02)は「取れれば市場価値が大きく上がる」として転職市場でも高い評価を受けています。一方で、合格率は非公表ながら「SAA-C03の数倍は難しい」という声も少なくない。
この記事では、SAA-C03取得後にSAP-C02を目指すインフラエンジニアに向けて、試験の全体像・3か月の学習計画・頻出分野の対策ポイントを実務目線で解説します。受験申し込みの前に「何を・どんな順序で・どれだけ学べばいいか」を整理したい方に、具体的なロードマップをお届けします。

なぜSAP-C02なのか?SAA-C03との決定的な違い
1. 問われる「深さ」が根本から違う
SAA-C03は「サービスの使い方を知っているか」を問う試験です。EC2を起動できるか、S3バケットポリシーを書けるか——正しい選択肢を選べれば通過できます。
SAP-C02はそこから一段深い。「複数のサービスを組み合わせて、どう設計するか」の判断力を見ます。設問は1問あたりの文章量がSAAの2〜3倍に及ぶケースも珍しくなく、「ベストな選択肢と2番目に良い選択肢の差」を判断させる問題が多数出題されます。
2. オンプレからの移行設計が頻出
オンプレとAWSを組み合わせたハイブリッド構成、既存システムのマイグレーション戦略、大規模なVPCネットワーク設計——オンプレ経験のあるインフラエンジニアが得意とする領域がまさに問われます。逆に言えば、オンプレ経験者はここで差をつけられるチャンスがある。SAAで「知識を詰め込んだ」段階から、SAPで「設計の意図を説明できる」段階へ引き上げるイメージです。
3. コスト・スケーラビリティ・セキュリティの最適解を問う
「どのサービスを使えばコストが最小か」「規模が10倍になったときにどうスケールするか」「コンプライアンス要件を満たすには何が必要か」——複数の制約条件を同時に満たす最適解を選ぶ能力が求められます。単一の正解ではなく「トレードオフの判断」がSAPの本質です。
SAP-C02試験の全体像
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 試験コード | SAP-C02 |
| 試験時間 | 180分 |
| 問題数 | 75問(採点対象65問 + 試験用サンプル10問) |
| 合格ライン | 750点(1000点満点) |
| 受験費用 | $400 USD(2026年時点) |
| 受験資格 | なし(SAA-C03取得が事実上の前提) |
| 有効期限 | 3年間 |
出題ドメインと配点比率(2026年時点)は以下の通りです。
・Design Solutions for Organizational Complexity(組織的な複雑さに対応した設計): 26%
・Design for New Solutions(新規ソリューションの設計): 29%
・Continuous Improvement for Existing Solutions(既存ソリューションの継続的な改善): 25%
・Accelerate Workload Migration and Modernization(移行とモダナイゼーションの加速): 20%
「新規ソリューションの設計」が29%と最大配点です。サービス単体の知識だけでなく、要件を満たす最適なアーキテクチャを設計できるかが合否の鍵を握ります。
3か月の学習ロードマップ
前提として、AWS SAA-C03取得済みかつ実務でAWSを1年以上使っているインフラエンジニア向けの計画です。未経験からの場合はSAA-C03合格を先に目指してください。
1か月目:試験範囲の全体把握とサービス知識の底上げ
まず「SAP-C02がSAAと何が違うか」を肌で理解するために、AWS公式の試験ガイド(SAP-C02 Exam Guide)を熟読します。AWSの認定ページからPDFで無料ダウンロードできます。そのあとは不足しているサービス知識を補う期間。特に以下の分野を重点的に整理してください。
・AWS Organizations & AWS Control Tower: 複数アカウント管理とOUの設計。中堅以上の企業環境では必須の知識。
・AWS Transit Gateway: 大規模VPC間の接続ハブ。オンプレ→AWSのハブ&スポーク設計で頻出。
・AWS Outposts / Snow Family: ハイブリッド・エッジ系サービスの概念整理。
・Amazon EKS / ECS + Fargate: コンテナ基盤の設計パターン。SAA時代に薄かった方は重点補強。
・AWS Service Catalog: ガバナンスと標準化の文脈で出題。
・AWS DataSync / AWS Transfer Family: データ転送・移行サービスの使い分け。
1か月目は「答えを出す」より「サービスの位置づけを理解する」ことに集中してください。問題演習は後回しで構いません。
2か月目:問題演習でパターンを体得する
2か月目から本格的な問題演習に入ります。ここで押さえたいのは「問題パターンの認識」です。SAPの問題は大きく3つのパターンに分類されます。
・パターンA(コスト最小化): スポットインスタンス・Savings Plans・S3ストレージクラスの最適組み合わせ。数値を伴う見積もり問題も出る。
・パターンB(移行・ハイブリッド): オンプレからのリフト&シフト vs リアーキテクチャの判断基準。AWS Application Migration ServiceとAWS Database Migration Serviceの使い分け。
・パターンC(セキュリティ・コンプライアンス): AWS Organizations SCPによるガバナンス、AWS Config・Security HubによるCIS基準遵守、AWS KMSとSecretsManagerの使い分け。
問題演習中は「なぜこの選択肢が正解か」を言語化する習慣をつけてください。○×を繰り返すだけでは本試験の長文問題には対応できません。1日あたり15〜20問を丁寧に解説まで読む方が、50問を流し読みするより効果的です。
3か月目:弱点補強と仕上げ
3か月目は「苦手分野の集中補強」と「本番ペースでの模擬試験」を繰り返します。2か月目の演習で正答率が60%を下回った分野を洗い出し、サービスの公式ドキュメントに戻って概念を再整理します。
本番試験は180分75問。1問あたり平均2.4分ですが、長文問題に時間を取られる傾向があります。最後の2週間は「75問を180分以内に解く」模擬試験を週2回こなして、時間感覚を体に染み込ませます。残り時間が少なくなったときに焦らないよう、タイムマネジメントを意識した演習が重要です。
頻出分野の攻略ポイント(オンプレ経験者向け)
1. 【ハイブリッド接続】AWS Direct Connect vs Site-to-Site VPN の使い分け
SAPでは「Direct ConnectかVPNか、それともその組み合わせか」という選択を問う問題が複数出ます。判断軸は以下の3点です。
・帯域幅と安定性が最優先 → AWS Direct Connect: 専用線接続なので遅延が低く帯域が保証される。ただし開通に数週間〜数か月かかるため、緊急性の高い移行には不向き。
・コストと柔軟性を優先 → Site-to-Site VPN: インターネット越しのIPSecトンネル。即日開通できるため、Direct Connectのバックアップとしての組み合わせも頻出。
・高可用性ハイブリッド → Direct Connect + VPN フェイルオーバー: Direct Connect障害時にVPNへ自動切替する構成が定番パターン。SAPでは「どちらか一方では要件を満たせない」シナリオで問われる。
オンプレで専用線を引いた経験があるエンジニアには直感で分かる選択肢ですが、問題文に「低コスト」「即日」「SLA99.9%」などの条件が付くと一気に絞り込みやすくなります。
2. 【マルチアカウント管理】AWS Organizations と OU設計
中堅・大企業のAWS環境では複数のAWSアカウントをOU(組織単位)で束ねる構成が標準です。SAPではOUの設計とSCP(サービスコントロールポリシー)による権限制限が頻出です。
オンプレで言えば「Active DirectoryのOU設計」に近いイメージです。本番環境と開発環境を別アカウントに分離する理由、SCPで特定リージョン以外のリソース作成を禁止する設定——このあたりを実務感覚で理解しておくと、選択肢の絞り込みが楽になります。
SCPは「許可ポリシー」ではなく「上限(ガードレール)」である点を意識してください。SCPで許可しても、IAMポリシーで拒否されていたらアクセスできません。この親子関係を図で整理しておくと、複合問題でも迷わずに済みます。
3. 【移行戦略】6 Rと移行ツールの選択
オンプレからクラウドへの移行戦略は「6 R(Rehost・Replatform・Repurchase・Refactor・Retire・Retain)」として整理されています。SAPでは「どの移行戦略が最適か」をシナリオから判断する問題が複数出ます。
・Rehost(リフト&シフト): そのままAWS環境へ移行。AWS Application Migration Serviceを使う。コスト・リスク最小だが最適化効果も最小。
・Replatform(リフト、ティンカー、シフト): RDSへの移行など、軽微な最適化を加える。マネージドサービスの恩恵を受けながら大きな改修は避ける。
・Refactor(再設計): マイクロサービス化・コンテナ化など抜本的なアーキテクチャ変更。コストと時間は最大だが、長期的な拡張性が高い。
・Retire: 使われていないシステムを廃止する。移行前の棚卸しで発見されるケースが多い。
・Retain: 移行コストに見合わないシステムをオンプレに残す。ハイブリッド構成の前提になる。
「コスト・時間・リスク」のトレードオフを設問の文脈から読み取って最適解を選ぶ練習が重要です。「できるだけ早く移行したい」なら Rehost、「長期的なスケーラビリティを確保したい」なら Refactor という軸で考えてください。
4. 【Well-Architected】6本柱の設計原則とトレードオフ
AWS Well-Architectedフレームワークの6本柱(運用上の優秀性・セキュリティ・信頼性・パフォーマンス効率・コスト最適化・持続可能性)は、SAP-C02全体を通じた設計判断の軸として機能します。SAA時代に「名前だけ知っている」状態だった方も、SAPでは「各柱のトレードオフ」を問う問題に対応できるレベルまで理解を深めてください。
例えば「信頼性を上げるためにマルチAZ構成にするが、コストは増える」「パフォーマンスを最大化するためにキャッシュを使うが、整合性が下がる」——この種のトレードオフを問題文から読み取って「一番重視すべき柱はどれか」を判断する訓練が効きます。
おすすめ教材と問題集
公式リソース(無料)
・AWS公式試験ガイド(SAP-C02 Exam Guide): AWS認定ページからPDFで無料ダウンロードできます。出題ドメインの比率と各ドメインに対応するサービス・機能が一覧化されており、学習の骨格を作る最初のステップとして必須です。
・AWS Skill Builder(一部無料): AWSが提供するオンライン学習プラットフォーム。SAP-C02向けの公式学習パスには有料コンテンツが含まれますが、無料でも活用できるコースがあります。公式模擬試験もここから購入可能です。
・AWSホワイトペーパー: 「AWS Well-Architected Framework」「AWS Migration Whitepaper」など、試験に直結するホワイトペーパーは無料で読めます。全部読もうとせず、苦手分野に絞って参照するのが現実的です。
問題集(有料)
・Tutorials Dojo(Jon Bonso作): SAPの問題集として国内外で最も評価が高いサービスです。解説が充実しており「なぜ正解か」「なぜ他の選択肢は間違いか」が丁寧に書かれています。1セット$15前後で購入でき、コストパフォーマンスが高い(2026年時点)。
・Whizlabs SAP-C02: 問題数が多くコストパフォーマンスが良い。ただし問題の品質にばらつきがあるため、メインはTutorials Dojoに絞り、追加演習として使うのが現実的です。
・AWS公式模擬試験: AWS Skill Builderから$40程度で購入できます。本番と同じ形式・難易度で受けられるため、受験2週間前の最終チェックに使うと実力の最終確認ができます(2026年時点)。
参考書(日本語)
SAP-C02に特化した日本語書籍はまだ少ない状況です。SAAの参考書をベースに知識を整理し、不足する分野はAWS公式ドキュメントの日本語版で補うのが現実的なアプローチです。また、実際にAWS管理コンソールを操作しながら学ぶことで、問題文の状況がリアルにイメージできるようになります。
EC2上でLinuxサーバーを扱う実務感覚を養いたい場合は、姉妹サイトLinuxMaster.JPの記事でEC2インスタンス管理の基礎を確認しておくと、ハイブリッド移行シナリオの問題が解きやすくなります。
よくあるつまずきポイントと対処法
「問題文が長くて読み切れない」
SAPの問題は1問あたり400〜600文字になることがあります。慣れないうちは読み切るだけで時間が溶けますが、「問題文を全部読んでから選択肢を見る」より「設問の制約条件(コスト最小・最大可用性・最短実装・既存システムへの影響最小)を最初に確認する」習慣をつけると処理速度が格段に上がります。問題文の最後にある「Which of the following…」の部分を先に読んで、何を求められているかを把握してから本文を読む順序で練習してください。
「どちらの選択肢も正解に見える」
SAPが難しい理由の核心がここです。2択に絞ったあとで迷ったときの判断基準は「問題文が最も重視している制約条件は何か」です。コスト最小化を求めているのにセキュリティ強化の選択肢を選ぶのは罠。「最も安い」「最もシンプルに実装できる」「最も可用性が高い」のうち、どの軸で問われているかを問題文に戻って確認し直す癖をつけてください。
「AWS Organizationsの問題が苦手」
AWS Organizationsは実務で触れる機会が少ないエンジニアも多く、SAPで初めて体系的に学ぶケースが多い分野です。まずOUの階層構造とSCPの継承ルール(親OUのSCPが子OUに自動適用される)を図で整理すると、選択肢の絞り込みが楽になります。「管理アカウントにはSCPが適用されない」という仕様も頻出の引っ掛けポイントです。
「コンテナ関連のサービス選択で迷う」
Amazon ECS・Amazon EKS・AWS Fargate・AWS App Runner——コンテナ系サービスが増えたことで選択に迷うエンジニアが増えています。選択軸は「オーケストレーション制御の必要性」と「インフラ管理をどこまで任せるか」です。
・クラスター管理を自分でやりたい + Kubernetes経験あり → EKS
・コンテナ実行だけに集中したい → ECS on Fargate
・コードをデプロイするだけでOK → App Runner
この軸で問題文の要件を当てはめると、選択肢が自然に絞られます。
本記事のまとめ
AWS Solutions Architect Professional(SAP-C02)は、オンプレ経験のあるインフラエンジニアにとって「知識を実務設計力に昇華させる」試験です。SAAが「知っている」を問うのに対し、SAPは「複数の制約条件を満たす最適解を選べる」を問います。
・試験の全体像: 75問180分、合格ライン750点。「新規ソリューション設計」29%が最大配点。
・3か月ロードマップ: 1か月目はサービス知識補強、2か月目は問題パターン体得、3か月目は弱点補強と模擬試験。
・頻出3分野: ハイブリッド接続・マルチアカウント管理・移行戦略。オンプレ経験を最大限活かせる領域。
・問題演習: Tutorials Dojoをメインに「なぜ正解か」を言語化しながら進める。
・本番対策: 制約条件を先に確認してから選択肢を読むルーティンを体に染み込ませる。
合格後は、AWSのマネジメントコンソールがより立体的に見えるようになります。設計の意図を読み取りながらインフラを触れるエンジニアへの大きな一歩として、SAP-C02は確かな投資対効果があります。
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